東京総研及び元森公認会計士・税理士事務所の掲載記事情報

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■当社が、グローバルネットワーク発行「貿易と産業」の記事で紹介されました。
2000年 春季号 Vol.474


東京総研(株)

代表取締役社長元森俊雄氏

本社:東京都千代田区神田錦町2-2共同ビル7階
創業:1997年
http://www.tmic.co.jp/

 ベンチャー支援のコンサルティング会社、東京総研(TMI)社長の元森氏は一風変わった経歴を持つ。東京大学経済学部卒業後、 通産省に入省したが、官庁の仕事が肌に合わず、二年で辞めて公認会計士の資格を取得。その後、ハ ーバードビジネススクールへ留学 し、卒業後、ボストンコンサルティング日本法人でコンサルタントとしてのキャリアを積み、その後 一貫してコンサルティング畑で活躍、現在に至っている。このユニークな経歴が、彼の好奇心とベンチャー精神を物語っている。

 ベンチャー企業の立ち上げ、公開、監査まで総合的に対応
 元森氏は九七年にTMIを創業するとともに、TMIのビジネス パートナー、監査法人ナカチの設立に参画した。ナカチの設立に参画したのはベンチャー企業の育成を視野に入れてのことで、両社の役割分担は明確だ。
  まずベンチャー企業の立ち上げ段階では、元森氏が代表を務める 「元森公認会計士・税理士事務所」 が経理面をサポートする。そして 株式公開が視野に入ってくれば、TMIが公開支援コンサルティングを行い、さらに公開後はナカチ が監査を担当する(なお、ナカチ代表の中地宏氏は日本公認会計士協会の会長を務めている)。
  ベンチャー企業にとっての課題 は二つある。一つは資金調達を可能とするビジネスモデルの作成 だ。一般的に、アイデアそのものと、そのアイデアを事業として成 り立たせるところまでのギャップ は大きい。そのギャップを埋める 手助けをするのが、TMIの仕事 だ。もう一つは、ベンチャー企業がある程度のところまで成長しても、大企業のマーケット参入によ る倒産や乗っ取りなどの問題がある。そのようなリスクヘの対応策 をTMIは提示していく。
  しかし、起業後間もないベンチ ャー企業からのコンサルティング料はあまり期待できない。したが って、成功報酬的な部分が収益の大半だ。成功報酬の例としては、資金調達に成功した場合、その額の数パーセントあるいはワラント債などをもらって、株式公開によ るキャピタルゲインを得るという ような形だ。
  現在TMIがコンサルティング を行っているベンチャー企業のう ち六社(ネット系三社、非ネット系 三社)がマザーズ公開を狙っており、そのうちの一社が順調に行け ば来年にも株式公開するため、キ ャピタルゲインが得られそうだ。

 ベンチャーオンラインで起業家と支援者のマッチング
 同社は今年2月、起業家とエン ジェルやベンチャーキャピタル 《VC》などの投資家、そして税理士、弁護士、コンサルタントなどのプロフェッショナルが出会う場 をインターネット上で提供する、「ベンチャーオンライン(VOL) (http://www.venture.ne.jp)」を スタートさせた。
 このVOLは、アメリカの某大学を中心とした非営利組織(NPO)が運営する、エンゼル・キャピ タル・エレクトロニック・ネットワ ーク(ACE-NET)のシステム を参考にしたものである。
  97年、TMIは中小企業庁からの依頼により、アメリカでのイ ンターネットを活用した中小企業支援の仕組みを調査した際、ACE-NETの存在を知った。そこで。日本でもこのような仕組みを作ろうということになり、99年に通産省からシステム開発・作成の助成金を受けた。

 99年10月、アメリカではNPOではないが、ACE-NET に類似した純民間組織である「ガレージ・ドット・コム(Garage.com)」が設立された。ガレージ・ドット・コムの特徴は、それ自体がVC機能を持っている点だ。TMIは、助成金が出ている間はこのままACE-NET型で行き、その後はガレージ・ドット。コム型に移行していく意向だ。
  VOLは現在、起業支援情報の提供やメールマガジンなどの情報発信機能にとどまっており、本格始動は六月の予定である。そこで本来の狙いであるマッチング機能を補完するために、オフラインで交流会や無料相談会などを企画。 開催している。二月に開催した交流会には、200人以上が参加し大盛況であった。交流会は、参加者同士の出会いの場、そしてTMI自身にとってもベンチャー起業発掘の場となっている。
  現在VOLは無料だが、今年の秋から会員制にして有料化する予定だ。マッチングサービスの会費 については、投資家とプロフエッショナルは有料、起業家は当分無料だ。起業家が集まらなければ元も子もないからだ。

VC機能を持つことにより、投資家に信頼感
 最近は大規模なVC企業のみならず、独立系のVCやファンドを設立する人たちの活動が目立って きている。TMIは、彼らとタイ アップすることによって、VC機能を持とうとしている。
  TMIは、起業家と支援者の出会いの場を提供すると共に、自らも出資していく。例えば、あるベ ンチャー企業が一億円の資金を必要としている時、「我々(TMI) も、この企業に○○万円出資します」というような形にすると、「TMIが出資しているベンチャーなら」ということで、投資家にその企業に対する信頼感が生まれ、資金調達がしやすい。このようにTMIとしては、呼び水的な出資機能を持ちたい。現在、それほど大きい額ではないが、数百万円程度 の出資をベンチャー企業五杜に行 っている。
  現在従業員は10名余。全員が 財務やコンサルティングのプロフ ェッショナルだ。彼らが中心とな りビジネスプランを現実的なものにしていく。しかしこの人数では、サポートできるベンチャー企業数に限界があるので、「フェロ ーシステム」を設け、外部のプロフェッショナルがボランティアで立ち上げ・初期段階のベンチャー企業をサポートしている。そして ベンチャー企業の収益が出てきた時点で、手数料を請求するというようなことにも取り組んでいる。 元森氏はTMIのベンチャー支援事業について、「この仕事をしていると、紹介が紹介を呼び、ネ ットワークがどんどん広がってい く。それが、何よりも面白い。また新しい事業を起業家と一緒に作 り上げていくのは非常に興味深 い。時には、失敗するベンチャー企業も出てくるが、創造することに携わり、貢献し感謝されるのが、この仕事の醍醐味だ」と語る。

政府の政策について
  文京女子大学経営大学院でーベン チャー論Lを教える客員教授の顔 も持つ元森氏は、一連の政府のベ ンチャー支援について、1権かに 政府の過剰とも言える経済的支援 により、モラルハザードなどの問 題を生む可能性もあるが、民間企 業の資金やサポートを呼び込む、 呼び水的な形での支援には意義が あるLと一定の評価をしている。 日本には、米国にあるようなジ ャンクボンドマーケットなどは存 在しない。そこで東京都が中心と なって中小企業の私募債に対する 信用供与など、ベンチャー起業が 資金調達しやすいような環境作り を官主導で行っている。1必ずし も効率的でない面もあるが、ベン チャーへの資金の流れを作るとい うことが重要だ」と元森氏は言 ・つo 政府のベンチャー支援策に加 え、マザーズやナスダックジャパ ンの設立が、ベンチャーブームを 加速させている。TMIの活躍の 場はこれからますます増えていく だろう。