東京総研及び元森公認会計士・税理士事務所の掲載記事情報

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■当社代表の元森の記事が、「VENTURE LINK」誌に紹介されました。
「留保金課税を廃止せよ」
「VENTURE LINK」 2000年2月号 掲載

 ベンチャーの躍進が1990年代のアメリカ経済再生の原動力で した。中小企業・ベンチャーの振興は、日本政府が昨年11月に打ち 出した「経済新生対策」の8つの施策のトップに挙げられ、日本経 済再生の大きな課題になっています。起業家精神が発揮されるよう な土壌を日本に根付かせるためには、出資促進と企業成長促進との 2つの観点からベンチャー税制の方向性を考察すべきだろうと思い ます。

 第1の出資促進の観点からは、個人投資家と機関投資家の立場に 立って、ベンチャーへの出資が魅力的になるには、どうしたらよい かを考えればいい。

 まず、個人投資家に対しては、株式売却益課税 を優遇すべきです。①公開会社の株式売却益は2001年4月以降総合課税になります が、公開前から保有している株式の売却益は公開後1年間に限って 税率を半分にし、②未公開企業の 株式売却益は現在でも総合課税で すが、短期譲渡でも税率を半分に する。これによりエンゼルが日木 でも増えるでしょう。

  次に、機関投資家であるベンチ ャーキャピタルのリビングデッド 化している出資に関しては、評価 損の計上、あるいは投資損失準備 金の計上を認める。

 第2の企業成長促進の観点から は、一定の要件を満たす企業には 次のような措置が望まれます。

  まず、内部留保の蓄積が乏しい ベンチャーが内部留保を蓄積しや すいようにすることが重要です。 ベンチャー企業の大部分は同族企 業で、所定額を超過する内部留保 については法人税の割増課税があ ります。これは「内部留保はする な!」というのに等しく、廃止す べきです。少なくとも、設立後5 年以内のベンチャー企業に対して とか、留保利益が資本金の2倍ぐ らいに達するまでとか、の要件を 定めて留保金課税を停止すべきで す。

 2番目に、経営者へのインセン ティブ(報奨)については、役員 賞与の損金算入を一定の条件をつ けて認めるべきです。ベンチャー 企業の場合、利益計画が立てにく いため、創業者自身の月額報酬を 抑えるケースが多い。経営努力の 結果、利益が出たとき、従業員と 同じ基準で役員賞与を支給し、か つ年間の役員報酬・賞与の合計が 1000万円とか1500万円ぐ らいまでは、社長や副社長でも嘗 与の損金算入を認めるべきです。

 また、2年前の商法改正で、役 員・従業員に対するストックオプ ションについては、発行済株式の 10%まで認められるようになった が、資本金の小さいベンチャーに は100%ぐらい認めてほしい。

 3番目に、外部の支援者へのイ ンセンティブとしてストックオプ ションを認めてほしい。ベンチャ ーは創業段階ではコンサルタント などの外部支援者へ報酬を十分払 えませんが、これをカバーできる からです。今春から新事業創出促 進法の認定企業には認められます が、認定要件が厳しいためごく一 部のベンチャーしか利用できない でしょう。広く認められるように すべきです。

 ポイント

中小企業支援やペンチャ-企業 の振興を促すにはベンチャー企業 への出資の株式売却益の課税優遇 措置、パソコン優遇税制のような 税額控除などに加えて同族会社 に対する留保金への法人割増課税 を廃止すべきである。また役員報酬 の一定の範囲での損金算入を 認めることなどが、求められて くる。